保育士実技試験【造形】の課題は適切なのか?
みなさん、こんにちは。
Panda’s breath(パンブレ)の関まりね🐼です。
まだ残暑は続いてますが、セミの鳴き声からコオロギや鈴虫の声に変わり、少しずつ季節の移ろいを感じるようになりました。
それにしても今年の夏は暑かった💦
保育園で過ごす夏は、より一層そう感じました。
それでも子どもたちは、毎日元気に楽しそうに過ごしていました。
今回は、保育現場での子どもとのやり取りを通して、「保育士実技試験<造形>の課題の内容が受験者にとって適切なのか」について、私が感じたことをお話します。
1.子どもにお絵描きの評価を下される瞬間
子どもたちの好きな遊びの中に「お絵描き」があります。
年齢にもよりますが子どもたちは、自分の思い浮かんだものを描いたり、通園バッグのキャラクターを見本にして見ながら描いてみたりなど、楽しみながら様々な絵を描いていきます。
年齢の低い子どもは、自分の要求にすぐに応じてくれる心地よさを求めて、保育士に
「アンパンマン描いて」と、そのものズバリを描いて欲しいと言ってくることがあります。
また年齢が少し高い子たちは、自分で描きたい気持ちはあるけれど、まだうまく描けない時「ねぇ先生、ネコちゃんの頭(外枠)だけ描いて、目と口は自分で描くから」や「ハート描いて、中の色をピンクで塗るから」など、部分的な手助けを求めてきたりすることがあります。
つまり、「〇〇を描いて」とお願いされることは、保育現場ではよくあるのです。
私はもともと絵に自信がある方ではありませんが、それでもハート💖や動物🐼、果物🍉やお菓子🍰くらいなら(なんとか)描けます。
ですが、いつも「描いて~」とお願いされるたびに、内心「私に描けるものでよかった」と密かに胸をなでおろしていました。
・・・が、そんなある日、今までにない境地に追い込まれる事態となりました。💦
4歳の男の子に、「先生、ヘラクレスオオカブト描いて~」と言われてしまったのです。
さあ大変です!
呼吸をすることを忘れるほど焦りました(ちゃんと練習しとけって話ですよね)
。
正直に「先生描けません。ごめんなさい」とすぐに諦めてしまうことは、私の保育士としての(ささやかな)プライドが許さず、でも「うん、いいよ」と即答もできず、時間が止まってしまいました。
とにかく何か言わなくては・・・と思い
「いや~難しいな、どうやって描こうかな」
と悩んでみると、
親切な子どもたちが、図鑑や絵本を探してきてくれて「これ見ながら描いたら?」とアドバイスをしてくれたのです。
嬉しい!でもね、図鑑のヘラクレスオオカブトは妙にリアルで、イラスト風に描くにはより難しいのですよ。
それでも、子どもたちのキラキラした期待に満ち溢れた表情をみると、何とかせねばと思う私がいました。
どうにか描いて(形にして)「はい、かわいいヘラクレスオオカブトを描いたよ💦」と苦しいながらも笑顔で子どもに手渡しました。
受け取った子は黙ってじーっと私の描いた絵を見続けます。
私はドキドキしながら返事を待ちます。それはまるで師匠に作品を見せて合否のジャッジをもらう弟子のような心境でした。(本当に緊張した)
心優しいその子は、微妙な顔をしながらも「う~ん、まあこれでいいかぁ。つのがかっこいいし」と合格ぎりぎりラインのOKをくれました。(心からほっとしました)
このエピソードを乗り切ったあと、ふと私は保育士実技試験【造形】の課題のことを思い出したのです。
2.保育士実技試験<造形>の課題は現場にそった内容ではない?
保育士実技試験当日課題<参照>
令和6年前期 造形試験当日発表課題
【事例】を読み,次の3つの条件をすべて満たして,解答用紙の枠内にその情景を描
きなさい。
【事例】
E保育所の3歳児クラスの保育室には,子どもたちが自由に遊ぶことができる空き箱や使い終わった素材を集めて入れたカゴが置いてあります。子どもたちはそれらの空き箱等を使って遊んでいます。保育士は、その様子を子どもたちのそばで見守っています。
条件
1.【事例】に書かれている保育の様子がわかるように描くこと。
2.子ども3名以上,保育士1名以上を描くこと。
3.枠内全体を色鉛筆で着彩すること。
ちなみに実技造形の試験時間は45分で、縦横19㎝の枠内に上記の条件を満たした絵を色鉛筆で描きます。
改めてみると、この試験課題は、「保育実習」として考えた場合、本当に適切な内容なのだろうかと思えてきました。
保育現場の場面を想定した試験課題として考えると、現在出題されている「保育の一場面(保育士や子どもの活動場面)を描かせること」よりも、子どもに描いてと言われた時に、さらっと描けるようにすること(絵画)や、子どもが作る作品の下準備や見本作りに必要とされる様々な形を描いたり作ったり切ったりすることをスムーズにできる力(工作)の方が保育現場で必要なスキルではないかと思えてなりません。
3.保育現場にそったスキルを評価される課題とは
これは私の勝手な思いつきなのですが、
例えば、今実施している当日課題の内容を、「保育の一場面(保育士と子どもの様子)」ではなく、以下のようにしてみてはどうでしょうか。
保育現場にそった造形当日課題<まりね案>
【事例】を読み,次の条件をすべて満たして,解答用紙の枠内に描きなさい。
【事例】
M保育園の4歳児クラスでは、遠足で行った動物園の話をしながらお絵描きを楽しんでいます。保育士が子どもたちに「遠足で何が楽しかった?」と聞くと、Aちゃんは「ぞうさんが見れたこと」。Bちゃんは「バスに乗ったこと」と言いました。それぞれ楽しかったことを絵に描くことにしましたが、Aちゃんが「ぞうさんがうまく描けない」、Bちゃんが「バスの形がわからない」と言って、保育士に描いて欲しいと言ってきました。そこで保育士は、ぞうとバスを描いてみることにしました。
<条件>
1解答用紙に「ぞう」と「バス」の絵を描くこと。
2色鉛筆で着彩すること。
いかがでしょうか。
このような課題で、その場で指定された動物や乗り物などを描くという方が、保育現場で役立つスキルにつながるのではないか、と勝手に考えてしまいました。
4.実技試験を見直す時期ではないか
造形の課題は、評価する側(試験官)の事情もあり、「色鉛筆画」となっていることもあるとは思いますが、本来「造形」ですので、絵を描くことだけでなく、工作や折り紙などが課題となってもよいのではないかと私は思います。
折り紙も折り方の本の説明を見ながら折ることは、慣れないとなかなか難しいのですが、これまた子どもから「これ折って」や「ここどうやって折るの?」など頼まれることがよくあります。
音楽や言語に比べて造形の課題は、受験者が身につけるべきスキルとしては、少し偏っているように私には思えてしまいます。
実技試験の受験者は、練習を死に物狂いで頑張ります。絵の練習をし過ぎて腱鞘炎になってしまったり、歌やお話の練習のし過ぎでのどを痛めてしまう人もいます。でもそれは、何がなんでも合格したいという気持ちの表れです。
実技試験は保育士試験受験者にとって最後の通過門ですから、ここで落としたくはないですよね。これほどまでに練習に全力を注ぐのであれば、やはり保育士になったらすぐに使えるスキルの方が、受験者本人が納得して練習に励めるのではないでしょうか。
平成16年に保育士試験が全国統一試験になり、全都道府県で共通の試験内容になってから今年で20年になります。
そろそろ実技試験の内容も見直してもいいのではないかと思いました。
子どもは「大人はなんでもできる」と思っている時期があります。成長するにつれて「大人にもできないことはある」ことを知っていきます。だからといって、逃げてばかりでは大人として、保育士としてどうでしょうか。
苦手なことがあってももちろんいいと思います。でも、できる範囲で努力をすることは必要です。子どもから100点満点はもらえなくても、「先生が一生懸命描いてくれた」と思ってもらえるよう努力は積んでいきたいと私は思います。
さあ、次は子どもたちが大好きなレッサーパンダやカピパラを描く練習でもしようかな。(難しいなぁ)。